
VISAと並ぶメガブランド「MasterCard」。
今現在、VISA、MasterCard、この2つのブランドで、クレジットカード市場の9割を占めます。
1940年代後半、一部のアメリカの銀行が、地元の商店で現金同様に使用できるクーポンを顧客向けに発行したことが起源です。
1951年、ニューヨークにあるFranklin National Bank(フランクリン・ナショナル銀行)が初のクレジットカードを正式に導入。
その後の10年間は、各大都市で、提携の加盟店で支払い手段として使用できるカードを銀行が発行するフランチャイズ方式が展開されました。

1966年、全米最大の銀行「バンク・オブ・アメリカ」が、カリフォルニア州以外に本拠を置く銀行に対しても、バンカメリカードのライセンスを供与する動きに対抗し、
同年8月16日、ニューヨーク州バッファローで、銀行17行が、各行のクレジットカードを相互に取り扱うクレジットカード事業体連合を設立。この「Interbank Card Association(インターバンク・カード協会:ICA)」は、正式に認可された後、シンボルマークとして「i」を採用しました。
これが、「MasterCard」の前身となります。
他の同様の組織とは異なり、ICAは、一銀行に運営される組織ではありません。代わりに、ICAのメンバーは、組織運営のための委員会を設立し、委員会を通じて、信用確認や支払のルールを確立。組織運営に関わるマーケティング、セキュリティ管理及び法的側面の処理も、委員会が担当しました。
組織の運営が軌道に乗ると、世界的な躍進が開始。
1968年、ICAは、メキシコのBanco Nacionalと提携して、現在の世界的な巨大ネットワークへの足掛かりを築き上げます。
同年、ICAとBanco Nacionalは、ヨーロッパでEurocardと提携。ヨーロッパの市場において、優位に立ちます。また、この年に、日本のカード発行会社も初めてこのネットワークに参入しました。

1969年、インターバンク・カード協会は、ウエスタン・ステート・バンク協会からブランドイメージ強化のために、「Master Charge(マスター・チャージ)」の商標権を取得。
こうして、複数あった銀行系クレジットカードは、後のVISAである「バンクアメリカード」と後のマスターカードである「マスター・チャージ」の2つのクレジット・ネットワークに集約されていきます。
その後多くの国々が続いてネットワークに参入した結果、1970年代後半までには、アフリカやオーストラリアからもカード発行会社が参入するまでになりました。

この国際的な躍進を受けて、
1979年、ICAは、その名称を「MasterCard International」に改名。Master Chargeの名称も「MasterCard」に変更します。これにより、「i」のシンボルマークは使用されなくなりました。
1980年代に入ると、MasterCard Internationalは更にアジアやラテンアメリカに勢力を拡大。
1987年、中華人民共和国(中国)国内での初めてペイメントカードを発行。
1988年、旧ソビエト連合で初のMasterCardカードを発行。

1988年、世界最大級のATMネットワーク「Cirrus」によるサービスを開始。「Cirrus」により、今現在、世界各地にある80万ヵ所以上の現金自動預け払い機で即座に預金口座へのアクセスが可能となっています。
1990年、MasterCardは提携カードの戦略を打ち出し、業界をリード。

1991年、Europay と MasterCard は、「Maestro」サービスを開始。「Maestro」とは、世界各地で商品購入やサービスの提供を受ける際に使用でき、ATMでの現金引き出しもできる、世界で唯一のオンライン支払可能なPIN方式(暗証番号を使用する)デビットカードサービスになります。
2002 年、MasterCard と Europay International が合併し、「MasterCard International」となり、非営利組織から株式会社へと移行します。
同年、フロリダ州オーランドにて非接触クレジットカード「paypass」を発行。
2006年、ニューヨーク証券取引所に株式を上場。社名も「MasterCard Worldwide」と変更。

MasterCardはそれぞれの国の事情に合わせ柔軟な戦略を採ってきました。
それ故にブランドイメージの統一化が弱く、デビッドカード市場では優位に立ちつつも、クレジットカードの領域ではVISAの後塵を拝しています。しかし、先んじて株式上場を果たし、市場から巨額の資金を調達。ワールドカップ・スポンサーなどでも火花を散らし合い、2強の白熱した戦いはしばらく続くことでしょう。