貸金業法

貸金業法とは、消費者金融などの貸金業者や、貸金業者からの借入れについて定められた法律です。近年では、クレジットカードの需要が高まりカードローンを利用される方が増え、さらにこの法律の重要性が高まっています。
貸金業法が成立されたのは昭和58年5月13日(法律第32号)です。それまで、貸金業者の貸付の規制や金利の適正化は具体的に法律で定められておらず、暴利と言われる非現実的な利子を取る業者も多く存在していました。また、個人の借入れに関する規制がなかったために、複数の貸金業者からお金を借り、返済能力が無くなってしまう債務問題も多発しました。

また当時は借金苦から自殺者が増加し、「サラ金キャンペーン」も展開されました。
※サラ金キャンペーン・・多重債務問題などにより生じた様々な諸問題を予防・解決するために計画的な借り入れを啓発するために施行されたキャンペーン。貸金業者7社のテレビコマーシャルの中で借り入れ防止を抑制するメッセージが喚起されました。

これを受け、貸金業法では借りすぎ・貸しすぎの防止、金利の上限、悪質な取り立て行為の禁止等を定めることで貸金業者の利用者を守る役割を果たしています。

そんな貸金業法の詳しい内容と、時代の波を受けてこれまでに何度も改正された法案とその背景について見てみましょう。また、今後益々高まっていくクレジットカード需要に伴い、貸金業法がどのように推移していくのかについても、探ってみましょう。

<貸金業法の目的>

貸金業法は、昭和58年5月13日(法律第32号)に制定されました。第一条には、以下の通り目的が定められています。

第一条 この法律は、貸金業が我が国の経済社会において果たす役割にかんがみ、貸金業を営む者について登録制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うとともに、貸金業者の組織する団体を認可する制度を設け、その適正な活動を促進するほか、指定信用情報機関の制度を設けることにより、貸金業を営む者の業務の適正な運営の確保及び資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資することを目的とする。
施行は同年11月1日。このときの正式名称は「貸金業の規制等に関する法律」でした。

<貸金業法の主な内容と変遷について>

貸金業法は、貸金業者として登録する義務や方法、登録できない場合、また貸金業者としての禁止項目について定めています。
※貸金業者とは・・財務局又は都道府県に登録を行い消費者への融資を業務として行う事業者のことで、具体的には消費者金融や信販会社、クレジットカード会社など。

貸金業法第2条1項

この法律において「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によってする金銭の交付又は当該方法によってする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいう。

ちなみに銀行は銀行法の対象となっており、貸金業法の規制対象ではありません。それを明確にする貸金業者の呼び方で、ノンバンク(=銀行ではない)というものがあります。

成立当時の名称「貸金業の規制等に関する法律」は、2006年12月には現在の貸金業法として名が改められ、貸金業法第一次法案が施行されました。
が、その後悪質な貸金業者の執拗以上の取り立て行為や常識では考えれない暴利によって債務不能に陥り自殺してしまう借り手が増えたことから、貸金業法は2010年の完全施行に至るまで、4度に渡り改正が行われてきました。

<貸金業法違反の罰則>

貸金業法に違反した貸金業者は規定により罰則を受けます。主な内容は、行政処分で行政は貸金業者に対し、登録抹消や業務停止、業務改善命令を下すことができます。

貸金業法第24条6項

内閣総理大臣又は都道府県知事は、その登録を受けた貸金業者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該貸金業者に対し登録を取り消し、又は一年以内の期間を定めて、その業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。

さらには10年以上の懲役もしくは3,000万円以下の罰金またはその両方が課せられる違反行為もあり、罰則として重いものといえます。ただし、貸金業法を違反した貸金業者と融資に関する契約を結んだ利用者は、罰則を受けることはありません。あくまで貸金業法は貸金業者に対する法案です。

これは、貸金業法ができた背景に、借金の返済や多重債務によって経済的不安に陥った利用者がこの時期急増していたためです。こうした苦境から利用者を守るべく、貸金業法は制定されたのです。

では、こうしてできた貸金業法は何故4度に渡り改正されていったのでしょう。その改正内容を時代の背景と共に見ていきましょう。

【第一次施行~完全施行まで】

<2006年12月公布・第一次施行>

貸金業法が制定される以前は、貸金業者を取り締まる法律が無かったために消費者金融やヤミ金融は明らかに返済能力の無い利用者に過度な貸し付けを行い、また現在では考えられないような高金利での貸付けを行っていました。このため、こうしたヤミ金融に対する罰則が強化されました。

・ヤミ金融に対する罰則の強化。懲役5年→10年へ延長

<2007年12月公布、第2次施行>

その後、借り入れの保証人になった人が強引な返済を迫られる「商工ローン問題」が大きな社会問題へと発展。さらには反社会的勢力率いるヤミ金融業者による悪質な取り立て行為に苦しむ人が増加しました。
これによって経済的不安・精神不安を訴え、中には自殺する債務者も増加しました。
これによって以下の貸金業者に対しての規制が加えられました。

・執拗な取り立て行為の規制
※夜間に加えて日中の執拗な取り立て行為の規制、借り手の自殺による生命保険金による弁済禁止など
・貸金業協会の自主規制機能の強化→業務改善命令の導入
・支払い能力以上の貸付の抑止
・新しい自主規制団体の設立→日本貸金業協会設立。

貸金業者の禁止行為の強化

(禁止行為)

第十二条の六 貸金業者は、その貸金業の業務に関し、次に掲げる行為をしてはならない。
一 資金需要者等に対し、虚偽のことを告げ、又は貸付けの契約の内容のうち重要な事項を告げない行為
二 資金需要者等に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤認させるおそれのあることを告げる行為(次号に掲げる行為を除く。)
三 保証人となろうとする者に対し、主たる債務者が弁済することが確実であると誤解させるおそれのあることを告げる行為
四 前三号に掲げるもののほか、偽りその他不正又は著しく不当な行為

(生命保険契約等の締結に係る制限)

第十二条の七 貸金業者は、貸付けの契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約を除く。)の相手方又は相手方となろうとする者の死亡によつて保険金の支払を受けることとなる保険契約を締結しようとする場合には、当該保険契約において、自殺による死亡を保険事故としてはならない。

第二十一条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たつて、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。

<2009年6月、第3次施行>

訪問販売やマルチ商法など、いわゆる特定商取引に関するトラブルが多発。これに伴い貸金業者を頼る人も増加したことから、規制もさらに強化されました。
他にも指定情報機関制度が創設されました。これにより利用者の支払い能力を年収や持ち家状況など様々な分野において図ることができるようになり、利用者の支払い能力を超える借入れが禁止とされました。
※指定情報機関制度・・個人の年収・住宅情報・勤務先などの情報、これまでのクレジットカードの利用履歴(住宅ローンなど)の開示を依頼できる機関

債務問題を抱え自殺する方も増加しました。平成19年2月末時点で消費者金融を5件以上利用している人数は180万人。平均借入総額は一人当たり約240万円に。

改正後の内容は、以下の通り
・貸金業務取扱主任者試験の実施
・指定情報機関制度開始
・業者の財産的基礎引き上げ(2000万円)

第二節 業務

(業務運営に関する措置)

第十二条の二 貸金業者は、内閣府令で定めるところにより、その貸金業の業務に関して取得した資金需要者等に関する情報の適正な取扱い、その貸金業の業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行その他の貸金業の業務の適切な運営を確保するための措置を講じなければならない。

勧誘行為に対する規制強化

3 貸金業者は、貸付けに係る契約について保証契約を締結しようとする場合には、当該保証契約を締結するまでに、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項(一定の範囲に属する不特定の貸付けに係る債務を主たる債務とする保証契約にあつては、第三号に掲げる事項を除く。)を明らかにし、当該保証契約の内容を説明する書面を当該保証契約の保証人となろうとする者に交付しなければならない。

<2010年6月、第4次施行※完全施行>

第4次施行の中で注目したい法案は総量規制です。利用者に対して年収ごとに借り入れできる金額が定められるようになりました。

特に近年社会に広く浸透しているクレジットカードは後払い制が主流となっているため、自身の返済残高が分かりにくくなるというリスクが生じます。規制が生じることで、利用者の保護がさらに強まりました。

改正後の内容は
・上限金利の引き上げ(29,2%→20%)
・総量規制
※総借入残高が100万円を超えるものには返済能力調査を義務化しました。これにより、年収の3分の1を超える貸し付けは禁止に。
・業者の財産的基礎引き上げ(5000万円)

(返済能力の調査)

第十三条 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合には、顧客等の収入又は収益その他の資力、信用、借入れの状況、返済計画その他の返済能力に関する事項を調査しなければならない。
2 貸金業者が個人である顧客等と貸付けの契約(極度方式貸付けに係る契約その他の内閣府令で定める貸付けの契約を除く。)を締結しようとする場合には、前項の規定による調査を行うに際し、指定信用情報機関が保有する信用情報を使用しなければならない。

(過剰貸付け等の禁止)

第十三条の二 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第一項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
2 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に三分の一を乗じて得た額をいう。次条第五項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。

<グレーゾーン金利>

また、貸金業法について語る上で欠かせないのがグレーゾーン金利についてです。
これは貸金業者の利率についての法案・みなし弁済が原因となり発生した過剰金利のことです。

貸金業者に関わる法律は貸金業法の他にも、出資法・利息制限法があります。出資法は貸金業者などを規制する法律で、出資金の受け入れの制限や金利設定を取り決めています。出資法に違反すると、刑事的処罰を受ける義務があります。
利息制限法は、利息について定めた法律です。出資法も利息について定めてはいますが、利息制限法に違反しても刑事的処罰は課されません。ただし利息制限法を超えた利息は行政処分の対象となります。

しかし一定基準を満たし出資法の利息を満たしていれば利息制限法の定める利息を定めてもよい、とするみなし弁済という法案が貸金業法に定められたことで、貸金業者を利用する利用者は立場的に弱くなりました。これにより多重債務者が増加、経済的不安と精神不安から自殺する利用者も増えたのです。

このことからみなし弁済を認めるべきでないという世論の見方が強まり、2006年の最高裁判決でみなし弁済を認めないとする判決が下されました。

この決定に後押しされ、2010年の貸金業法の改正でみなし弁済が撤廃されることとなったのです。

ただし、現在でも当時の過剰利息によって過払い金請求問題に苦しむ方は多く存在しています。みなし弁済によるグレーゾーン金利は現在では支払い義務が無い利息とされています。

<まとめ>

貸金業法は、貸金業者の業務や禁止事項、また利用者を守るための法案が定められた法律です。設立当初から時を経て、ヤミ金融業者、グレーゾーン金利、カードローンと様々な問題を受け改正されてきました。

貸金業法が無かった当時は貸金業は都道府県に営業開始のための登録を済ませれば認可してもらうことができたので、その簡易さから2004年には23,000社存在していました。けれどその後、貸付業法によって貸金業者の運営に対する様々な規制が設けられ、2018年4月末には1760社にまで減少。金融庁への悪質な貸金業者に関する苦情は徐々に減少しています。

一方で無登録業者に関する苦情は2016年度を見ると2300件とまだまだ横ばいにあります。こうした無登録営業の貸金業者への規制や処罰が今後の課題といえるでしょう。

また今後はさらにキャッシュレス決済の需要が高まるので貸金業法の隙をついた悪質な犯罪も出てくるでしょう。今後もこうした時代の背景と共に姿を変え、私たちを守っていってくれる法律となっていくでしょう。

With the cooperation of youtube06934501
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