割賦販売法

割賦販売とは、販売業者が商品代金を2か月以上かつ3回以上の割賦つまりは分割後払いまたはリボルビングシステムで販売する取引のことを指します。

近頃では世界全体が商品やサービスを支払う際、クレジットカードを使用するキャッシュレス社会へ染まりつつあります。日本でも先頃、政府が先頭に立ちキャッシュレス対策に乗り出し、長年現金至上主義を貫いてきた日本でも、今や一人一枚クレジットカードを持つのは当たり前の時代となってきています。
※ちなみに、後払いでも一回の支払いで決済が完了するものは現金と同じ額の支払いとなるので割賦販売には当たりません。

クレジットカードの元の形である月賦制度が日本に浸透してきた当初は、その支払い能力への懸念から、官僚やエリート層にのみ権限が与えられていました。けれど今では、ごく一般のサラリーマンから主婦や学生まで幅広い層がクレジットカードを持てるよう様々なクレジットカードが出回っています。

クレジットカードの長所は、やはり欲しいものを手持ちの現金が無くとも後払い決済によって支払うことが可能なため、消費者の幅広いニーズに応えられる点です。少額なものはもちろん、例えばブランドバッグ等大金が必要な買い物でもその場で購入することが可能です。近年では、中国で急速にクレジットカードが広まり、中国観光客が日本に訪れ大量の商品を購入する「爆買い」に注目が集まっていますね。

さらにはクレジットカードを利用すると各クレジットカード会社のポイントサービスやその他の優待サービスを受けることができるため、現金を使って支払うよりもクレジットカードを利用するほうがメリットが高いといえます。

クレジットカードには長所もある一方で短所も・・
けれどもクレジットカードには長所ばかりではなく、短所もあります。まず一番の短所として考えられるのは、後払いゆえに支払い金額が消費者に把握できなくなってしまうことです。他にもクレジットカードの弱みに付け込んだ詐欺等も近年増加しています。

クレジットカードのトラブルに対応できる法律とは
では、こうしたクレジットカードにまつわるトラブルを解決してくれる法律には、一体どんなものがあるのでしょうか。

クレジットカードには後払いのショッピング利用機能の他にも、手持ちの口座から即時に支払いを可能とするデビットカード機能、現金の借入ができるキャッシングサービスがあり、こうした機能が安心安全に消費者保護の元で運営されるためには、様々な法律が定められています。

中でもクレジットカードを規制する重鎮的な役割を果たしている法律といえば、割賦販売法でしょう。こちらは昭和36年に制定された法律で、「割賦販売等の取引を構成にし事業の健全な発展を図る 法1条」つまりはクレジットカードの事業を守りながら地盤を整え発展させていくことを目的として定められています。クレジットカード利用者からの支払いを受け入れる加盟店がクレジットカード会社から確実に立替金を納めることのできるようにクレジットカード会社への登録制を義務化。また割賦払いにおいての消費者トラブルを防止するための規制が定められていました。

制定時の背景と株式会社JCB

割賦販売法が制定された同年の1月には、純日本産のクレジットカード・株式会社日本クレジットビューロー【現JCB】が設立されています。同年3月には日本初となる汎用型クレジットカードの発行を開始。同社は同年5月には今では一般的な利用代金の自動口座引き落としを、民間企業として初めて実現しました。

実はこのJCBの創始者・山田光成氏はあのメガバンク三菱UFJニコスの創始者でもあり、この三菱UFJニコスの前哨となる会社が、日本クレジットビューローが創設される以前に山田氏が設立した会社・株式会社日本百貨サービスです。その後社名を変更。

株式会社日本百貨サービスは、今のようなプラスチックカードではなく月賦と呼ばれるチケットでの後払いサービスからスタートしました。この月賦は当時の現金至上主義の日本国内では最初浸透が難しいと考えられたため、山田氏はあらゆる手段を講じてこの月賦を社会へ浸透させていき、設立からわずか2年、高度経済成長期の追い風も伴い10億円という売り上げを誇るまでの企業へと成長しました。

その成功から、さらなる飛躍へ目を向けた山田氏が思い付いた会社が、銀行という巨大かつ安心なバックグラウンドを携えた大規模な会社・株式会社日本クレジットビューローでした。既に成功していた後払い制度の世の中への浸透をさらに後押しすることになった同社の設立、またその他クレジットカード業界の日本への参入も前後して、この時期から急速にクレジットカードは日本国内へと広まっていきました。

こうした急速な広まりによって、消費は加速しましたが、一方で、商品代金を支払った後に販売主が倒産し、消費者が被害を被る事案が発生。また販売主が買主に対して所有権担保を行う等圧倒的に不利な条件を与えたことによる損害も発生。こうしたトラブルへの規制を急ぐために割賦販売法は制定されました。書面交付義務や契約条件規制が設けられました。

その後、新たなトラブルの多発により改正とその背景・詐欺事件の増加
その後もさらに利用が深まったクレジットカードですが、多額の支払いを後払いによって可能とするために訪問販売によるトラブルが多発しました。

これによって、昭和47年に日本で初めてクーリングオフ制度が導入されました。また、クレジットカードを介した決算で商品の代金を支払った後に販売業者の倒産によって支払い義務のみが残るといったトラブルがさらに多発したために昭和59年には個別信用購入あっせんが規定され消費者の安全度がさらに深められました。

過去の有名なクレジットカード詐欺事件

こうしたクレジットカードの短所に付け込んだ極めて悪質な商法を利用した詐欺事件として有名なものをいくつかご紹介します。

・ココ山岡事件・・昭和42年に設立したダイヤモンド販売店・ココ山岡。某テレビ番組にもクイズ番組の景品として提供され信頼度も高かったことから、全国に知名度が広く伝わっていた同店は、日本全国に多くのチェーン店を展開していました。そんな同店の商法は、5年後買い戻し商法と呼ばれるもので、ダイヤモンドを購入時と同じ同額で5年後に買い戻すという宣伝文句で多額の利益を得ていました。さらには独身男性をターゲットとした悪質な販売方法も批判にさらされ、その後経営不振による倒産、自己破産、また経営者は刑事責任に問われています。民事裁判で約25億円の返還が可決されています。
またダイヤモンドの同社の鑑定も実際の鑑定とは大きな開きがあったとされています。

・ダンシング事件・・寝具販売会社ダンシングが引き起こした詐欺事件。布団のモニター会員となることで実際以上の報酬が得られるという宣伝文句で会員を急増させたがその後会社は倒産。900人近い元会員が訴訟を起こしました。

これにより、平成20年には以下の通りに改正されます。

◎「指定商品・指定役務制」の廃止

旧法では規制対象とする商品やサービスを指定していましたが、今回の改正では指定制度を廃止。→これによりさらに消費者保護範囲が拡大しました。

◎その他規制の更なる強化

これまでの「2か月以上かつ3回払い以上」の分割払いのクレジット契約に加えて、「2か月を超える1回払い、2回払い」も規制対象となりました。
さらに個別クレジットを行う事業者は登録制になり、立入検査・改善命令・行政による監督規定も導入されることに。
また個別クレジット業者に対して、訪問販売等を行う加盟店の勧誘行為について調査することも義務付けられました。

◎クーリングオフ制度について

与信契約をクーリングオフすれば販売契約も同時にクーリングオフされることに。悪質な訪問販売業者等による勧誘による被害を被った際には、個別クレジット契約の解約及び支払ったお金の返還も請求可能となりました。

◎クレジットカード業者の信頼の強化

クレジット業者は指定情報信用機関を利用した支払能力調査を義務づけられ、消費者の支払能力を超えた決済が禁止されることになりました。

◎クレジットカード情報の保護の徹底

クレジットカード利用者のカード番号の不正提供・不正取得は罰則の対象に。クレジット取引の自主規制等を行う団体を認定する制度を導入。

※指定情報信用機関とは・・個人の年収や住宅情報等、主にクレジットカードの利用に必要とされる属性情報やクレジットカードの利用歴=クレジットヒストリーといった情報を登録している機関です。

この年の改正は一連のクレジットカード詐欺事件や不正使用を踏まえての大きな改革として注目を集めました。

この画期的な改革によって、2007年から2016年までの10年間に消費者生活センターに寄せられた苦情相談の推移を見ると、個別クレジットの相談件数がこの10年間で69,348件から20,206件にまで減少しています。

平成28年改正内容

ただ、その一方で近年問題となっているのがインターネットショッピングでのクレジットカード取引が多用化されたことによって増加した消費者トラブルです。苦情件数もここ数年で大幅に増加しています。不正被害額は2014年時点では約114億5,000万円でしたが4年後には約235億4,000万円まで増加しています。

またクレジットカード番号等の個人情報の不正入手による被害も拡大。近年では信頼度の高い配送業者等を装い偽のホームページを作成し、消費者をウェブサイトに誘導、カード番号や暗証番号を入力させるといったフィッシングと呼ばれるクレジットカード不正使用も問題となっています。

他にも関連性の無いアプリケーションソフトにスパイウェアを組み込みバックグラウンドで作動させることで個人情報を盗み出すという巧妙な手口も。

こうした背景を受けて、平成28年にさらにクレジットカード不正使用対策の強化が改正案として盛り込まれました。これによって、加盟店契約会社及び決済代行会社に登録制・加盟店調査義務等が導入され、それぞれのクレジットカード情報の管理・処理体制を契約初期段階から見極め、その後も定期的に調査を行うことで不正を検知しやすいしくみとなっています。今後もクレジットカードのセキュリティー対策はより強化されていくものとされています。

その事由として、近年のインバウンド効果も挙げられます。実は日本では詐欺の被害に遭いにくいICチップ搭載のクレジットカードへの移行が進み、クレジットカード会社側の詐欺被害撲滅への取り組みは進んでいるものの、クレジットカードを使用する加盟店においては偽造されやすいタイプの読み取り端末今だに使われているお店も多く、対応が遅れていたのです。

世界でもこうした問題が浮上していましたが、ここ数年で加盟店側の機器を入れ替える等の処置が見られました。そんななかでも日本が未だに対応が不足しているとなると、インバウンド効果によって流れ込む世界中の詐欺グループから多大な被害を被ることも予想されることから、先に述べたセキュリティー対策強化の改正案が急ピッチで整えられたようです。

改正案では、加盟店にICカードの読取端末の導入を義務付け、大型店やチェーンストアでは大規模な改修や機器類の入れ替えも現在進められています。

まとめと今後の動向

このように、割賦販売法はクレジットカードの発展とクレジットカード利用者・加盟店との間の相互の利益関係を可能とするため、様々な時代背景の中、幾度と改正が成されてきました。クレジットカードは長所も多い反面、大幅なリスクが伴うこともあるのです。

割賦販売法では、そうしたリスクから消費者を保護する法案が様々に盛り込まれていますが、まずは私たちが責任と知識を充分に蓄えたうえでクレジットカード決済を利用する必要性があることも決して忘れてはいけません。

今後、日本では東京オリンピックの開催も決定しているためさらに世界各国から多くの外国人が訪れることが予想されます。喜ばしいことではありますが、そのぶんクレジットカードによる犯罪が多発するかもしれないというリスクも高まることから、油断はできません。割賦販売法でも、こうした犯罪を取り締まるためセキュリティー対策がさらに強化されていくことが予測されます。

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