利息制限法とは、貸金業者を利用する利用者がお金を借りる際の金利の上限を定めた法律です。この利息が貸金業者と利用者との関係を平衡に保つことのできるよう正してくれる法律です。
ちなみに利息制限法と似た法律には出資法というものがありますが、こちらの法律と利息制限法の違いは、定める上限金利が制定以来一定に保たれてきた利息制限法とは異なり、出資法の上限金利は制定以来段階的に引き下げられ、現在の利息制限法と同等の金利に落ち着いているという点です。
また、利息制限法には上限金利を超えた契約を結んだ場合の罰則が定められていませんが、出資法には罰金や懲役といった重い刑事的処罰が定められている点です。
さらに貸金業者について定められた法律にはさらに貸金業法という法律が存在しており、こちらは貸金業者の業務内容に対しての取り決めなどが定められています。この3つの法律は総じて貸金三法と呼ばれています。
そんな貸金三法の重要なカギを握る利息制限法について、その概要と他の2つの法律との関係性を見ていきましょう。
<利息制限法の制定された背景>
利息制限法は1954年5月15日に公布され、同年6月15日に施行されました。当時問題となっていた貸金業者の過剰な利息によって複数の業者から借金をし、多重債務に陥り自殺する人が増加した社会的背景から、こうした弱者的存在である消費者を救うべく、本法が制定されました。
ちなみにここに定められている業者は消費者金融などをいいます。銀行も貸金業を営んでいますが、銀行は銀行法によって規制されているため、利息制限法の規定の対象は外れます。
<利息制限法の定める上限金利>
利息制限法の定める上限金利は、借入額の大きさによって異なります。詳細は以下の通り。
・元金10万円未満・・上限金利20%まで
・元金10万円以上100万円未満・・上限金利18%まで
・元金100万円以上・・上限金利15%まで
借入額が大きくなるほど、上限金利は低く設定されています。ちなみに元金以外の手数料は、一部の例外を除いて利息とみなされます。この例外となる手数料は具体的にはATM手数料、礼金、割引金、調査料など利息とみなされるものを示し、これらを総じてみなし利息といいます。
利息制限法の上限金利は利用者のことを考慮し、また利用者保護を目的に制定されたものだということが、この上限金利の定め方で理解できます。
利息制限法第1条
金銭を目的とする消費者貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合 年二割
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分
三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分
<利息制限法の定める罰則>
では、利息制限法の定める上限金利を超えた契約を貸金業者が結んだ場合、どのような罰則に課されるのでしょうか。
上限金利を超えた利息については支払う必要はありません。ただし、たとえ利息制限法に違反していても貸金業者には罰則はありません。
ただし、利息制限法に違反した超過金利については無効となり、利用者は支払った後でも過払い金として、貸金業者に請求することは可能です。これを過払い金請求といいます。
<利息制限法の定める遅延損害金への上限金利>
利息制限法は、他にも遅延損害金についても上限金利を定めています。
遅延損害金とは、借金の返済が遅れてしまった際にかかるお金のことです。つまりは返済が遅れたことでさらに発生してしまう新たな借金ということになります。
これがどんどん膨らむことで利用者は支払い能力をさらに弱め、経済的かつ精神的に追い詰められることになります。
これに対し、利息制限法は以下のように定めています。
利息制限法第4条
金銭を目的とする消費者貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
けれどもその後2010年に改正法が施行。遅延損害金の上限金利については次のように定められました。
利息制限法第7条
第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
つまり、現在では借入金の大きさによって変動することなく、遅延損害金の上限金利は20%となっておりこれを超える遅延損害金については無効となるのです。
<罰則がない利息制限法に代わり貸金業者を規制する法律とは>
ここまで、利息制限法の概要について見てきましたが前述でも述べたように利息制限法には出資法や貸金業法にあるような重い刑事的処罰が定められていません。
もちろん利息制限法を超過した利息については無効となりますが、罰則がないということは悪質な貸金業者に隙を狙われやすいものと思われるかもしれません。
これについてカバーしている法律が、出資法と貸金業法です。出資法は、出資金の受入や利息制限法と同じく利息について定めている法律です。この出資法は制定当初は という上限金利を定めていました。しかし現在では利息制限法と同じく20%の上限金利を定めています。
また、出資法に違反すると5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、あるいはその両方を課せられるのです。
また、貸金業者の業務について定める貸金業法に基づき、利息制限法を超える金利を定める貸金業者は営業停止処分などの行政処分を受けることになります。場合によっては、行政処分は社会的制裁となるので名誉棄損は著しく、刑事的処罰よりも重い罰ともいえるでしょう。
また、この2つの法律に裁かれ刑事的処罰と行政処分両方を受けるということも考えられます。
<グレーゾーン金利>
さらに、利息制限法について話すうえで欠かすことのできないキーワードが、グレーゾーン金利です。
これは2010年に撤廃される以前に貸金業法に定められていたみなし弁済が原因となる過剰金利のことです。
先にも述べました通り、出資法と利息制限法には制定当時から大きな開きがありました。
出資法の上限金利は、制定当時には年109,5%(うるう年には109,8%)と定められていました。
出資法の上限金利の変遷は以下の通り。
1. 金利年109.5%(1954年)
2. 金利年73.0%(1986年10月31日まで)
3. 金利年54.75%(1991年10月31日まで)
4. 金利年40.004%( 2000年5月31日まで)
5. 金利年29.2%(2010年6月17日まで)
6. 金利年20.0%(2010年6月18日から)
1954年から1986年に至るまで約30年間に渡り、109%という高金利が出資法で定められていた出資法。
特に制定当時の109.5%という数値には驚かされますね。ただし、利息制限法の定める上限金利を超える金利については無効というのが定義ではあります。が、この利息制限法の規定を違反していても、一定の条件と出資法の上限金利を満たしていればいいとみなすみなし弁済が以前は認められていたのです。
すなわち、利息制限法は何ら効力を持たない法律となっていた時期があったのです。これにより追い詰められた貸金業者の利用者は窮地に立たされ債務不能に陥る人が後を絶たず、このことから、みなし弁済を撤廃すべきという社会の声が大きくなりました。
そうして、とうとう2006年の最高裁判決で、みなし弁済の適用が否定される判決が言い渡されました。
これに後押しされ2010年には貸金業法が改正、みなし弁済規定が正式に撤廃。利息制限法を超える金利は行政処分の対象となる規定も追加されました。
こうして利息制限法は再びその効力を取り戻しました。現在では、貸金三法の歪は徐々に緩和され、消費者保護としての目的をさらに強めています。
<まとめ>
利息制限法は上限金利について定めた法律で貸金業法・出資法と並び貸金三法と総称されています。
利息制限法と出資法は共に利息について定めていますが、この2つの法律には大きな違いがあります。
1つは出資法に定められる上限金利は制定以後、段階的に引き下げられてきたものの、利息制限法の定める上限金利は制定以来変わっていません。
また、利息制限法を超えた過剰金利についてはその支払い額が無効となり返済してもらうこともできるものの、貸金業者には一切の罰もありません。
これに対して出資法は違反すれば刑事的処罰に問われます。
また、以前は利息制限法の効力を全く無効とするみなし弁済という規定が貸金業法に定められていました。これは2010年に撤廃され、利息制限法の効力は再び戻されています。
利息制限法は、消費者を守ってくれる心強い法律です。
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