近年、現金を持たないキャッシュレス社会が一般に広く浸透し、クレジットカードを使って少額からのカードローンをすることも、さほど珍しくなくなってきました。
住宅ローンに学資ローン、サラ金業者からの借入等・・誰しも多かれ少なかれ、欲しい物を得たり状況を得るため、借金をしています。
そんな借金のなかでも、貸金業者に払いすぎている利息のことを、過払い金といいます。元々借りた金額に加えた利息の内、一般的な金利よりも明らかに高い利息については、最近では消費者は貸金業者から取り戻すことが難しくなくなってきました。
では、明らかに高い利息とは、どの程度のものをいうのでしょうか。
・利息制限法によって定められている利息
貸金業者の貸付の際には利息が発生します。この利息については一般的に基準が設けられていて、この基準を定めている法律が、利息制限法です。
一般的な金利は、
・元本10満未満・・年20%
・元本10万円以上100万円未満・・年18%
・元本100万円以上・・年15%
と定められています。
これを上回る金利が、過払い金と呼ばれるものです。
・過払い金問題は何故起こっているのか。
法律の世界で最も多い相談は、お金の貸し借りに関する諍いとも言われています。なんと江戸時代においても、こうした問題があまりに多いため、町奉行所の扱いは別口となっていたのだそう。
そんな数多いお金の問題ですが、なかでも深刻化しているのが、過払い金請求問題でしょう。闇金業者といわれる違法な貸し付けを行う業者は法廷の上限利息の数十倍から数百倍の利息を暴力的にむしり取ると言われています。この契約は明らかに無効となるので、債務者は過払い金を請求することができます。
では、実際にここまで過払い金請求問題が大きくなった火種については、ご存知でしょうか。まずはその問題が起こった背景と経緯について、見ていきましょう。
・背景と国の対策
まず、過払い金の問題が発生したのは、近年多重の債務問題を抱える方が多くなり、中には返済しきれないほどの借金を抱えてしまい、違法な取りたてにより最悪な場合には自殺にまで追い込まれてしまう債務者が増加したためです。
現在でも現金主義だった日本にキャッシュレス機能を持つクレジットカードが登場、一般に広く深まり、簡単に借金ができてしまうようになり、これが新たな過払い金請求問題を引き起こしていると言われています。
この問題を受け、平成18年度に貸金業法が成立されました。同法律では、貸付業者【消費者金融、クレジットカード会社等】を対象に、借り入れの基本について定められています。かつては「貸金業の規制等に関する法律・略して貸金業規制法」という名称でした。
貸金業法は、貸金業を営むものが登録制に従い、適正な運営・活動が義務化することとしています。
また、この法律が施行される以前は、出資法という法律によって出資の受け入れ、預り金及び金利の取り締まりが成されていました。出資や金銭の借入によって伴う高額な損害を未然に防ぐことを目的とした法律です。この出資法を無視した法外の金利は上限金利と呼ばれ、刑罰を科されることになります。
さらには暴利や人道に反する金利から消費者を守るため、金銭消費貸し借りに一定限度の利息・遅延損害金の利率の制限を設けた利息制限法も制定されていますが、こちらには刑事的・行政的な法的責任が生じることはありません。
このため、刑事的処罰には前述した出資法・貸金業法が有効となります。この3つの法律が、過払い金請求問題においては重大なカギを握っています。
・法律の矛盾とその後の改正
では、こうした恵まれた法律が3つも整えられているので消費者はお金の貸し借りについて何の心配も要らなかったはず・・なのにどうして今もなお過払い金請求問題が蔓延しているのでしょうか。
その理由を詳しく見ていきましょう。
まず一番最初に制定された出資法の上限金利はとても高い水準で設定されており、貸金業者はこれに目を付け、異常ともいえる高値の金利で貸し付けを行っていました。その後、このことが大きな社会問題へと発展し、上限金利は徐々に引き下げられていったのです。また利息制限法との制限利率にも大きな開きがあり、徐々にその溝は埋まっていきましたが、それでも現在でも完全なる一致には至っていません。
この2つの法律の溝は、グレーゾーン金利と呼ばれています。簡単にいえば、利息制限法には違反するが、出資法には違反していない利率です。先にも述べた通り、利息制限法は刑事的な処罰の対象外となっています。反対に、出資法に違反すれば、刑事的処罰の対象となります。
このため白でも黒でもない、灰色の領域であることから、グレーゾーンという言葉が使われているのです。
ただし、利息制限法には刑事的処罰は課せられていませんが、民事上での罰則は設けられていました。けれどもこのわずかな罰則でさえも全く無しにしてしまう法律ができたのです。それが、貸金業規制法です。
この制度には、「みなし弁済」という制度が設けられていました。これは、貸金業者が利息制限法の定める制限利率を超えた利息を受け取った場合、それが貸金業規制法の所定の要件に違反していなければ、「みなし弁済」つまりは有効な利息とみなすというものです。なんと利息制限法には違反していても、貸金業規制法の基準を満たしていれば、何の処罰にも問われない、というものです。当然貸金業者は債務者に対して非人道的な利息を返還する必要もなくなります。
この制度はさらに社会的弱者を窮地に陥れ、当然ながら社会的にも批判を浴びました。裁判でも、このみなし弁済は数々の裁判での大きな争点となってきました。
そして平成18年の最高裁の判決で、みなし弁済を適用不可とする厳格な判決が言い渡され、さらに世論の激しい批判も加勢し、平成21年にはこのみなし弁済は完全に撤廃されました。
この平成18年度の判決は消費者の権利を守り、今日へのみなし弁済撤廃への道筋を作る重大な一歩に繋がったことは言うまでもありません。
けれども現在においてもこのみなし弁済は過払い金請求問題を解決するうえでの重要なキーワードとなってくるので覚えておきましょう。
また、出資法と利息制限法の溝は今だ皆無とはいえませんが、こちらについても行政処分の対象とされています。
また、貸金業法もみなし弁済の撤廃に加えて年収3分の1を超える個人への貸付を原則禁止とする総量規制を取り入れました。これによって、消費者の借りすぎが抑えられることに繋がりました。
他にも、法律上の上限金利の引き下げ、貸金業者に対する規制の強化も制度に設けられました。貸金業者には、法令順守の助言・指導を行う国家資格のある者・貸金業務取扱主任者を営業所に置くことが必要となりました。
・その後の問題・過剰貸付防止の社会的要請
こうしてグレーゾーン金利は撤廃し、3つの法律もさらに消費者保護を図るものへと改正されましたが、その後問題視されたのは、銀行のカードローンによって生じる過払い金問題です。
実は銀行は貸金業者と異なるため、総量規制が適用されないのです。このため、クレジットカードのキャッシングサービスによっていくらでも消費者がお金を借りられてしまうのです。
消費者側も銀行という安心できる看板を掲げられると信用してお金を借りすぎてしまう傾向があり、クレジットカードローンによって借り入れた金額と共に高い金利を支払っていても、その感覚すら持てなくなってしまうということで、新たな問題を生じさせてしまっています。
クレジットカードを発行する銀行からすれば、ショッピング枠から生じる利益よりもキャッシングサービスから生じる利息からの利益のほうが大きく、今まで規制の対象とはならなかったために見過ごされてきました。
銀行カードローンの残高は、平成29年度末には5兆8186おくえんとかこ10年間で7割以上にも増加、過剰な貸し出しにより、新たな過払い金問題を勃発させています。
これに対して平成28年9月、日本弁護士連合会が「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」を公表し、全国銀行協会へ要望しました。
平成29年3月には全国銀行協会が加盟銀行へ「銀行カードローンにおける広告の適正化」「審査体制の整備」を通達。貸付残高の伸びは落ち着きを見せています。
その後の金融庁の調べによると、平成30年にはメガバンクや地方銀行等108校の中で、融資上限枠を設定した銀行が通達以前に比べて大幅に増加しました。ただ、今だに上限枠のない銀行も多く早急な対応が望まれます。
・過払い金に該当する人とは
過払い金問題はまだ多く叫ばれていますが、現在は法律も消費者保護に焦点が移ってきているため、過払い金を請求する難易度も下がりつつあります。
では、どのような人が過払い金の被害に該当するのでしょうか。以下にまとめてみました。
平成22年6月17日以前に借り入れを開始された方・・グレーゾーン金利の対象となります。
借金を完済されてから10年以内の方・・既に支払い済みでも過払い金の時効は10年ですので取り戻せる可能性はあります。
上記に該当している心当たりあるようであれば、一度確認してみましょう。
・該当する場合の対処法・相談窓口
上記に該当されている方は、まずは金融庁の「金融サービス利用者相談室」へ相談されてみるといいでしょう。様々な個別トラブルについての話を伺ったうえで、他機関の紹介や論点の整理等アドバイスを行っていますよ。
こちらは電話受付は平日受付、ファックス・メール・ウェブサイトからは24時間対応を受けつけているので気軽に相談されてみて下さいね。文書でも対応可能。
他にも、最寄りの弁護士や法律事務所等に相談されることもオススメです。ただ、過払い金の返還には10年という期限が設けられているため、お心当たりのある方はくれぐれもお早めに動かれることをお勧め致します。
・過払い金請求問題についてのまとめ
いかがでしたか。過払い金請求問題について、御理解頂けましたか。
過払い金請求問題は、過去にはグレーゾーン金利という法の抜け穴を巡る問題が主流でしたが、現在ではキャッスレス社会の一般化に伴うクレジットカードの普及によってもたらされる、銀行のカードローンの問題が主流となってきています。
消費者がショッピングや人生における計画を楽しむためには、やはり貸付業者を無くすわけにはいきませんし、現在の日本国内においても借金をしていない国民はごくわずかでしょう。
昨今では国がキャッスレス社会の風潮を後押しする対策に乗り出し、世界的にも今まで日本と同じく現金至上主義であった中国が、銀聯カードの登場によって瞬く間にキャッシュレス国と化す等、益々今後クレジットカードの普及が高まることが予測されます。他にもスマホ決済やスマホに変わる代替機器による決済方法もいずれどんどんと社会に出てくることでしょう。
またクレジットカードを持つ年齢が低年齢化することも予測されるので、こうした時代背景を踏まえた早急な対応が法律や銀行・クレジットカード会社等の自助努力に臨まれます。
とはいえ、消費者である私たちも何も対策を講じないのではなく、「足るを知る」お金の使い方を身につけなくてはなりません。近年では資源のリサイクルも広く社会に浸透しつつありますし、まずは小さなところから物の価値よお金の使い方を見直し、過払い金に苦しまない自助努力を消費者である私たちも見直していく必要がありますね。
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